大正ロマンを焦がす蜜のしずく!『煙と蜜』――禁断の許婚が紡ぐ甘美な初恋の香り

──廊下に残る夕陽の色が、硝子越しにゆらりと揺れる。姫子は小さな掌を胸に当て、緊張のあまり机の角をそっと握りしめた。目の前には軍服に身を包んだ文治さま。すっと差し出された花襟のハンカチに、姫子の頬はたちまち紅潮する。
「姫子、泣いているのか?」
低い声の響きに、心の奥がキュンと跳ねた。姫子は小さく首を振るものの、指先は震えていた。

この日、二人が立ち寄ったのは絹織物で知られる西洋館のロビー。大きな窓から入る大正の西日が、螺旋階段の手すりを金色に染め上げ、華やかな調度品を艶やかに照らしている。紳士淑女が談笑する中、ただ一組だけ、時間の流れが少しゆっくりに感じられるような――それが、長蔵ヒロコ『煙と蜜』の世界の美しさだ。

大正時代という激動の幕開け――欧風のドレスやジャズの高揚感が賑わいを見せる一方で、伝統的な家柄や身分の呪縛が今も深く根を張っていた。そんな時代に、「許婚」という古い慣習で結びつけられた十二歳の姫子と三十歳の軍人・土屋文治。年齢も育ちもまるで異なる二人が、少しずつ相手の心を覗き込み、互いの想いを確かめ合う様子は、水面に映る淡い光のようにひたむきで透明だ。

姫子の目には、「文治さま」はいつも凛として見えた。軍帽を深くかぶり、どんな困難も笑顔で越えてきた強さ。けれど、その背後には時折、冷たい夜風に迷う子鹿のような脆さが隠れている。姫子は気づかずにはいられない。自分の小さな手袋が、彼の頬をそっと包み込む瞬間、そこにあるのは命よりも大切な「この人を支えたい」という鼓動だった。

隣り合わせて座った図書室の窓辺。本を読む横顔を静かに見つめる姫子に、文治がひとこと、
「姫子は、いつだって強くて、優しいな」
と言う。その言葉の余韻が、彼女の胸を甘く震わせる。たとえ周囲の視線が好奇や疑いに満ちていても、二人だけの時間は、黒煙のような世間の迷いから蜜のしずくのように二人を守り続ける。

『煙と蜜』は、連載前の読切時から「大正ロマン×濃厚ラブ」の極みと絶賛され、待望の連載化を遂げた良作。紙面を彩る緻密な背景画には、西洋館のステンドグラスや絞り染めの帯地、軍艦の甲板に差し込む陽光まで細部に宿る。長蔵ヒロコ氏ならではの“匠の筆致”は、画力を超えて大正の空気をそのまま揺らす。

文学フリークにも愛される一冊だが、そこに留まらないのが本作の魅力。2025年春には大正モダンをテーマにした公式カフェが東京で期間限定オープン。文治と姫子がデートした西洋館風のインテリアに囲まれ、作者監修レシピによる「ハニートースト」と「薔薇のミルクティー」を味わえる。注文特典として、複製原画ポストカードやキャラクタープロフィールカードが手渡され、まるで物語の隠れ家に訪れたかのような錯覚に陥る。

さらに、原作1巻発売を記念して配布された特製リーフレットには、長蔵氏の描く姫子と文治の幼少期スケッチ、当時の時代背景を解説したコラムがぎっしり詰め込まれた。ファン同士が集うSNSでは、リーフレットの限定カバーイラストを背景に、二人の禁じられた愛を語り合う熱い投稿が数千件を超えるほどの大反響を呼んだ。

グッズラインナップも逸品揃いだ。公式オンラインストアで展開中の「煙と蜜コレクション」には、姫子の髪飾りを模したシルバーのピンブローチ、文治の勲章をイメージしたエナメルバッジ、二人のシルエットが浮かぶクリアファイルセットなど、肌身離さず愛を共有できるアイテムがズラリ。中でも、真鍮製の胸章型キーホルダーは、戦友同士だけが分かるあの合図のデザインを再現し、男女問わず注目を集めている。

読者参加型のイベントも見逃せない。2025年夏、大正浪漫フェスティバルと題した展示会では、制作資料の原画はもちろん、当時の舞台衣装や帽子、扇子、文治の実際の軍服をイメージしたレプリカなどがズラリと並ぶ。さらに、「許婚式体験」と銘打ったステージでは、顔出しパネルを背景に記念撮影ができ、期間限定で姫子役・若手女優と文治役・イケメン俳優によるミニ朗読劇も上演された。チケットは即完売、追加公演が決まるほどの盛況ぶりだった。

では、まずは原作コミックスを手にとってみよう。以下の電子書籍サイトでは第1巻を丸ごと試し読みできる。会員登録無料、スマホでもPCでも、あの大正ロマンの扉がすぐ目の前に開く。

eBookJapan(https://ebookjapan.yahoo.co.jp/)
コミックシーモア(https://www.cmoa.jp/)
BOOK☆WALKER(https://bookwalker.jp/)
LINEマンガ(https://manga.line.me/)

姫子と文治の、煙のように幻想的で蜜のように甘い恋の軌跡。ページをめくるたび、あなたの心に沁みる大正浪漫の香りを、ぜひその肌で感じてほしい。

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